金地院(京都)の見所と歴史を金地院崇伝を中心に解説
蹴上駅から徒歩数分という近さで到着する金地院。すぐそばにある南禅寺のように大きな寺院ではないものの、池や庭、襖絵などもあり風情のある観光スポットの一つです。歴史に少し興味がある人は、金地院と言えば金地院崇伝を思い出す通り、崇伝と関わりのある場所でもあるので、その歴史やスポットの魅力を紹介していきます。
1. 金地院とは
金地院は京都府京都市左京区にある臨済宗南禅寺派の寺院で、南禅寺の塔頭のひとつです。重要文化財に指定されている本堂や茶室、特別名勝に指定されている小堀遠州作の枯山水庭園の鶴亀の庭が有名です。小堀遠州作とされる日本庭園は全国各地にたくさんありますが、遠州作と断言できる庭はかなり少ないようです。しかし金地院は遠州作と断言できる数少ない庭のひとつなのです。
2. 金地院の歴史
金地院は応永年間(1394-1428)に室町幕府4代将軍足利義持が北山に創建下寺院ですが、その後荒廃してしまい、慶長10年(1605年)に徳川家康の信任が厚く、江戸幕府の幕政に参与して「黒衣の宰相」と呼ばれた崇伝によって現在地に移築されました。
崇伝は金地院の再建にあたり、庭の作庭を小堀遠州に依頼しました。慶長15年(1610年)には駿府城内に駿府金地院が、元和5年(1619年)には江戸城内北ノ丸に江戸金地院が開かれ、駿府と江戸における崇伝の活動拠点となりました。
幕府より僧録に任ぜられ、それまで相国寺塔頭鹿苑院院主が務めていた僧録職はそれ以降、幕末まで金地院住持が務めることになり、五山十刹以下の禅寺を統括する最高機関となりました。
また10万石の格式を持ち寺大名とも呼ばれました。
3. 金地院の見どころ
金地院は狭い境内の割に見どころが多数あります。知識がないとすぐに見終わりますが、知識があると見どころがわかり楽しめると思います。
見所1. 本堂(方丈)
重要文化財に指定されています。本堂は豊臣秀吉が築城した伏見城の遺構で、1611年(慶長16年)に金地院崇伝が江戸幕府3代将軍・徳川家光から賜って移したとも、1626年(寛永3年)に新造されたとも言われています。通常の拝観とは別に、特別拝観というものがあり、方丈の中に入ることができます。決まった時間に係りの女性が 案内をしてくれるので、とてもわかりやすくオススメです。
方丈の中には絵師狩野探幽や狩野尚信が描いた襖絵や、山岡鉄舟が書いた「布金道場」、画家長谷川等伯の池に写った月に手を伸ばす猿を描いた「猿候促月図(えんこうそくげつず)」や「老松(おいまつ)」を見ることができます。
見所2. 金地院の弁天池と鎮守堂
金地院の池は弁天池と言われ、明智門をくぐった正面左手にあります。明智門の正面右手にある鶴亀の庭から橋がかかり、弁天池に浮かぶ鎮守堂へと続いていますが、観光で入ることはできません。弁天池には鯉や亀などがおり、周りには緑の木々や苔に覆われた風景になっており、風情ある池泉回遊式の庭園を楽しめる造りになっています。
見所3. 開山堂
後水尾天皇の「勅額」があるお堂が開山堂です。金地院崇伝の塔所で、十六羅漢像が左右に安置されています。勅額(ちょくがく)とは、天皇が直筆で書いた寺社額の事です。
見所4. 茶室
茶室と八窓席は重要文化財に指定されています。茶室は本堂の北にある小書院にあり、特別拝観で入ることができます。茶室は寛永5年(1628年)までには完成したと考えられていて、小堀遠州が織田有楽斎好みの茶室を改修したことがわかっています。
八窓席は、名前から8つ窓があるのかと思いますが実は6つなのだそうです。窓がたくさんあるという意味から8という数字を使っているそうです。茶室は、大徳寺の塔頭、孤篷庵の茶室、忘筌と曼殊院の茶室、八窓軒と合わせて、京都三名席と言われています。
見所5. 東照宮
東照宮は重要文化財に指定されています。東照宮とは徳川家康を祀る神社の事とされていて、金地院内に鳥居もあります。お寺内に鳥居があるのは珍しいものです。東照宮は寛永5年(1628年)に造営されました。京都唯一の権現造様式です。
東照宮には本殿、拝殿、石の間があります。天井には絵師狩野探幽が描いた「鳴龍」と土佐光起による36歌仙の額があります。金地院崇伝が江戸幕府初代将軍徳川家康の遺言により、家康の遺髪と念持仏を祀りました。東照宮といえば日光東照宮や久能山東照宮など、装飾が煌びやかなものがイメージされますが、金地院の東照宮は小さく、煌びやかな作りではありません。
徳川家康の戒名が東照大権現であり、東照大権現を祀る宮で東照宮。そして、金地院崇伝は徳川家康から家光までの3代に仕えた黒衣の宰相。このような関係がわかると歴史を感じられ、観光・旅行もより楽しめると思います。
見所6. 鶴亀庭園
鶴亀の庭は特別名勝に指定されています。庭園は寛永6年(1629年)に金地院崇伝が江戸幕府3代将軍徳川家光のために造り、寛永9年(1632年)に完成しました。小堀遠州が作庭したと断定できる数少ない庭園のひとつで、桃山時代の豪壮な意匠が見られる蓬莱式枯山水庭園です。
1500坪の広さの中に常緑樹と苔、石組で山や森、島をつくり、大海を表わす白砂と合わせ構成されています。本殿から見て右手に鶴、左手に亀が配されています。
蓬莱は(ほうらい)と読み、古代中国の想像上の神山の蓬莱山などに見立てた庭として鶴亀庭園が造られています。
見所7. 6つの門
金地院には一つの寺院では珍しく6つの門が設えられています。上記写真の門は楼門です。
- 「表門」南禅寺境内に面する門
- 「大門」改めて境内に入る門
- 「明智門」 方丈庭園と弁天池への入り口門
- 「御成門」貴人の参拝時に通られた門
- 「御透門」一般に東照宮参拝時に通る門
- 「楼門」東照宮の玄関門
4. その他の情報
金地院には御朱印は無いようで、御朱印に関して聞いてみると御朱印はやっていないと言われました。御朱印巡りをしている人には少し残念かもしれません。
その他1. 金地院の境内図
金地院には境内の地図があるの場所の名前などはわかりやすいでしょう。要点だけ解説すると、一番大きな建物が方丈、その前にあるのが鶴亀庭園。地図上で鶴亀庭園の下にあるのが弁天池と鎮守堂。地図左下が楼門。左上が東照宮、地図右上が開山堂です。
5. 金地院を含むおすすめ観光ルート
蹴上駅から金地院はすぐですが、金地院を出て南禅寺に続く門をくぐると道が左右にあります。右に行けばすぐに南禅寺→永観堂→哲学の道が続きます(その他のお寺などを見ながら歩くと銀閣寺まで行けます)。
南禅寺に続く門を出て左に行けばお土産屋→琵琶湖疏水記念館→京都市動物園、そこから結構歩きますが岡崎神社や金戒光明寺ルート。そして無鄰菴、平安神宮などにも行けます。なのでわりと自由度の高いルート選びができるので魅力的ですが、食事処やお土産屋が意外と少ないので、その点だけ注意するのが良いと思います。
その他、金地院→南禅寺→京都一周トレイルや、金地院→蹴上インクライン→日向大神宮というルートもあります。ただし、これは観光には不向き。汗だくになりながら山道を歩くルートなので、どんな観光旅行をしたいのかを考えてルートを選ぶと良いと思います。各ページに細かい情報を載せていくので参考にしてください。