祇王寺の歴史や見どころ、苔の解説
祇王寺は、苔が特徴的な狭いお寺です。四角い苔の庭とその周りを歩きながら観光するスポットですが、面積が狭いのですぐに終わるという印象でしょう。ただ、感動するほど美しい光景と木々の緑を体験できる貴重なスポットでもあります。 また紅葉の時期も美しく、狭いながらも嵐山の見どころの一つとなっています。
祇王寺の歴史を3段階で解説
歴史1. 往生院を良鎮が創建したのが始まり
祇王寺は、大覚寺塔頭の尼寺です。山号は高松山で院号は往生院、御本尊は大日如来です。祇王寺がある場所にはかつて往生院という寺院がありました。往生院は法然上人の門弟良鎮(りょうちん)によって創建されたと伝わっています。
歴史2. 祇王と仏御前が出家のため入寺
祇王寺とは、平家物語で描かれている、平清盛の寵愛を受けた白拍子(しらびょうし)の祇王(ぎおう)と仏御前(ほとけごぜん)が出家のため入寺した寺としても知られています。
白拍子とは歌舞(歌い舞う)であり、それを演ずるもののことです。主に遊女や子供が白拍子として活躍していたと言われています。その白拍子の一人で平清盛という当時最大の権力者に愛されたのが祇王という白拍子だったのです。
歴史3. 祇王寺として再興
嵯峨大覚寺の支配を受けて真言宗に改宗し、1905年(明治38年)に富岡鉄斎らの尽力によって尼寺、祇王寺として再興しました。1935年(昭和11年)に庵主となった智照尼は、瀬戸内寂聴の小説「女徳」のモデルとなった人物です。
祇王寺が更にわかる4人の人物
人物1. 平清盛(たいらのきよもり)
平清盛は、平安時代末期の武将で、保元の乱で後白河天皇と関係を築き、平治の乱の活躍で出世した人物。武士としては初めて太政大臣にまで出世したその後武家政権を樹立し、後白河法皇と対立し法皇を幽閉。独裁政権を確立した人物です。そして、この平清盛の寵愛を受けていたのが祇王です。
人物2. 祇王(ぎおう)
白拍子という歌舞の芸人(もしくは遊女と言われている)で、時の権力者平清盛の寵愛を受けた女性。しかし、平清盛が祇王から仏御前(ほとけごぜん)に気持ちが移り母・妹と共に往生院へ入寺します。母は刀自、妹が妓女という名前で平家物語の第1巻に登場します。
人物3. 仏御前(ほとけごぜん)
祇王を寵愛していた平清盛のもとに行くも会ってもらえなかった仏御前。しかし、祇王がとりなして平清盛の前で舞うと平清盛の寵愛は仏御前に移ります。これにより祇王やその母・妹は出家して嵯峨野の奥の庵へ去り、それを申し訳なく思い、次は我が身とも思った仏御前も尼となり祇王の庵を訪ねていきました。
人物4. 富岡鉄斎(とみおか てっさい)
富岡鉄斎(1837~1924)京都生まれの日本画家です。京都の生まれ。名前は猷輔のちに道節、さらに百練と改めました。字は無倦、号は初め裕軒のちに鉄斎、鉄崖と改めました。国学、儒学を学び、幕末は勤皇学者として国事にも携わりました。明治維新後は絵画に専念したとされています。
人物5. 智照尼(ちしょうに)
高岡 智照(たかおか ちしょう)、本名は高岡たつ子(辰子)で、1896年4月22日〜1994年10月22日まで生きた人物です。12才で大阪の花柳界に身売りされ芸子となり、芸子時代の15才の時、愛欲のもつれから自らの小指をつめたことでも有名になりました。海外でも「Nine-Fingered Geisha(9本指の芸者)」として知られています。東京新橋で芸者として活躍し、美しい容姿から絵葉書のモデルとしても人気を集めます。
23才で結婚しますが、その後離婚、自殺未遂などを繰り返し、38才で出家し智照尼となりました。祇王寺の庵主となったのは40才の時です。著書に「金春日記」「尼生活」「花喰鳥」などがある他、瀬戸内寂聴の小説『女徳』のモデルなどでも知られる人物です。
祇王寺の見どころ
見所1. 苔庭
境内は何種類もの苔が広がっていて、まるで緑のじゅうたんを敷いているかのような苔庭はとても見事です。種類の違う苔が混ざることで色合いが素晴らしく、季節ごとに色調が変化します。草庵には苔庭の苔の種類について解説しているコーナーもあります。
苔の種類は多々あります。一つ一つ形状も違うので祇王寺は苔女子・苔ガールにはおススメの場所です。
- ヒノキゴケは、イタチノシッポゴケともいい綺麗な水と空気でしか育成できない
- ホソバシラガゴケは、ヤマゴケとも言われ、丸い塊を作るような形状
- オオシラガゴケは、パイナップルの葉のような形の苔
- ギンゴケは、都会でもよくみられる苔で、コンクリートのすきまなどにも生えている苔
- シノブゴケは、苔玉によく使われ、ふかふかのマットのようになって生えている苔
- タマゴケは、苔自体はフサフサしているが、胞子体が玉や、目玉や、青リンゴのような形をしている
- フデゴケは、ボサボサになった筆のような苔で、苔の芝生のような容姿
- ヤマトフデゴケは、ふさふさした芝生のように群落を作る苔
- ハイゴケは、這うように生長する苔で、短いドレッドヘアのような形の苔
- コウヤノマンネングサは、ヤシの木のような形で日本の苔では最も大きい苔。
- カモジゴケは、フサフサした印象の苔で、「かもじ」とは日本髪を結う時に使われる付け毛のこと
- スナゴケは、星のような形の苔
- ナガエノスナゴケは、茎が長いタイプのスナゴケ
- カサゴケは、傘苔と書くように傘のような苔
- ミズゴケは、水辺などの湿地に密集して生え、内部に多くの水を蓄えられる特徴があり、乾燥した状態からワカメやシイタケのように水戻しできる苔
見所2. 草庵
本堂にあたる建物で、1895年(明治28年)富岡鉄斎らによって建立されました。草庵からは苔庭を眺めることができます。御本尊の大日如来像、平清盛、祗王、刀自、祗女、仏御前の木像が安置されています。
見所3. 吉野窓(虹の窓)
草庵の控えの間にある円い窓です。窓の格子と外の竹が交差して影が虹色に見えることから虹の窓とも呼ばれています。
見所4. 宝筐印塔
宝筐院塔は、鎌倉時代に作られたもので、左側には祇王、妓女、母刀自のお墓があり、右側には平清盛の供養塔が立っています。
見所5. 黒髪塚
高岡智照尼の供養塚です。
見所6. 祇王寺妓女桜
現在は切り株だけの姿になっていますが、苔庭に植えられていた樹齢150年の桜の木です。かつては桜の時期になるとピンク色の桜と緑の苔庭のコントラストがとても美しかったのだとか。
見所7. 紅葉
境内には楓がたくさん植えられていて、秋になれば色づいた木々と緑の苔庭のとても美しい景色が広がります。
祇王寺周辺のランチ
祇王寺の周辺には数件ほど飲食店があります。化野念仏寺の方に向かうとさらに飲食店やお土産屋などがあり、 ランチにはそれほど困らない場所と言えそうです。その他、不定期ですが、餅などを焼いて売っていったりする場所もあるので、ちょっとした食べ歩きもできる時期もあります。
祇王寺へのアクセス
- 住所:京都市右京区嵯峨鳥居本小坂32
- 京福電車 嵐山駅で下車 徒歩30分
- 三条京阪駅から京都バス61・62系統に乗車し、嵯峨釈迦堂前で下車 徒歩15分
- 参拝時間:9:00~16:30
- 拝観料:300円
祇王寺周辺のおすすめ観光スポット
紅葉や桜の時期には美しい景色が見られるため観光客の多いエリアです。祇王寺の隣に滝口寺と檀林寺があります。また少し歩くと二尊院や化野念仏寺もあり、紅葉の季節や新緑の季節などは見事なもみじ風景を楽しむことができるでしょう。
その他、嵐山は宝筐院や天龍寺など観光スポットも多く、祇王寺までも3キロ程度の距離なので、嵐山の景色を楽しみながら歩いて散策するのもおすすめです。
周辺1. 滝口寺
滝口寺は祇王寺の隣にあるので徒歩数十秒で到着するスポットです。行事童謡狭いお寺ですが、階段を上がっていく少し高い場所にあるのが特徴です。人も少なく良い所も少ないですが、 静かな雰囲気で歴史を感じながら嵐山観光するなどにはいいのかもしれません。
周辺2. 檀林寺
檀林寺は、祇王寺から見えるすぐ近くにある小さなお寺です。小さな庭と、小さな建物があり、建物の中に入って、掛け軸や仏像など歴史を感じるものを間近で見ることができます。
周辺3. 二尊院
二尊院はもみじの綺麗なお寺です。紅葉の名所としても知られていますが、青もみじも美しく、境内も広いので祇王寺や滝口寺、檀林寺などの小さなお寺で物足りない人には良い観光スポットなるでしょう。
周辺4. 化野念仏寺
化野念仏寺は祇王寺から少し歩きますが、特徴的な形お墓があるスポットで、もみじも美しく、外には数件ほどお店が並ぶなど、観光スポットとして特徴的な雰囲気があるお寺です。
周辺5. 宝筐院
宝筐院(ほうきょういん)は祇王寺から少し歩きますが、紅葉の時期などに特別公開されているお寺です。紅葉の名所として知られており、見事な紅葉が楽しめる庭があります。紅葉の時期に今おすすめのスポットです。
周辺6. 清涼寺
清涼寺は祇王寺から少し歩き宝筐院の隣にあるお寺です。釈迦や桂昌院に関する掛け軸や像などが本堂に配置されており、歴史や仏教を知るには良いスポットです。
祇王寺のまとめ
- 山号:高松山
- 院号:往生院
- 宗旨:浄土宗 → 古義真言宗
- 宗派:真言宗大覚寺派
- 本尊:大日如来
- 開基:念仏房良鎮
祇王寺は小さなお寺ですが、苔や緑が好きな人には風流で良いスポットです。また、檀林寺と滝口寺へは徒歩数十秒という位置に隣接しているような位置にあります。二尊院や化野念仏寺など嵐山(小倉山)の観光スポットが密集している場所にあるので、まとめて観光すると良い京都観光になると思います。