法然院の歴史と見どころ

1. 法然院の歴史
法然院は、京都市左京区鹿ヶ谷にある浄土宗系の寺院です。鎌倉時代に法然が弟子の住蓮、安楽と共に六時礼讃行を勤めた旧跡です。
住蓮、安楽と言えば、法然院の側にある安楽寺の物語を知っているとわかりますが、後鳥羽上皇に処刑された法然の弟子です。詳しくは安楽寺のページでお伝えしていますが、後鳥羽上皇の女御絡みの嫉妬によって、住蓮、安楽は処刑、法然と親鸞は島流しになったのです。
これらの経緯を経て、延宝8年(1680年)に知恩院第38代門主・万無上人が法然ゆかりの地に念仏道場を建てることを発願し再興しました。
- 鹿ヶ谷の草庵で法然が住蓮・安楽と六時礼讃を行った由来のある寺
- 住蓮・安楽は法然の弟子で近くに住蓮山安楽寺がある
- 六時礼讃(ろくじらいさん)は阿弥陀仏を昼夜に六回拝むこと
- 1680年(延宝8年)に知恩院の萬無と弟子の忍澂が念仏道場として再興
元は浄土宗内の独立した一本山でしたが、昭和28年(1953年)に浄土宗より独立し、単立宗教法人になりました。正式名は、善気山法然院萬無教寺ですが、一般的には院号の法然院として知られています。御本尊は阿弥陀如来で、法然上人立像なども安置されています。
宗派 | 浄土宗 |
---|---|
山号 | 善気山(ぜんきさん) |
寺号 | 萬無教寺(ばんぶきょうじ) |
本尊 | 阿弥陀如来 |
2. 法然院の見どころ
見どころは、山門と白砂壇、重要文化財に指定されている方丈にある狩野光信筆の襖絵や、名水として有名な善気水、椿の庭です。
法然院の山門は茅葺で、とても趣があります。紅葉の時期には生い茂る木々が赤く色付き山門との景観が美しいです。そして、門をくぐって見える両脇の白砂壇。白砂壇は水を表していて、ここを通ることで心身が清められると言われています。
方丈は、住職の住む場所のことですが、法然院の方丈は、1687年に伏見にあった後西天皇の皇女の御殿を移築したもので、落ち着いた風情のある建物です。
そして桃山時代に描かれた狩野光信筆の襖絵と、1971年に描かれた堂本印象筆の襖絵が収蔵されています。これらの襖絵は、普段は非公開ですが、春と秋の伽藍が公開されるときに同時公開されるのでぜひ見ておきたいところです。
また、方丈庭園には、阿弥陀三尊像を象徴する三尊石が配置され、名水善気水が湧き出しています。現在、水を汲むことはできませんのでご注意ください。そして、法然院は椿の名所としても有名で、特に本堂北の中庭には三銘椿(五色散り椿、貴椿、花笠椿)が植えられていていて椿の庭と呼ばれています。
椿の開花時期は3月下旬から4月上旬で、ちょうど春の特別公開の時期と重なるため、特に観光客が増えます。椿の時期にぜひ見て欲しいのが手水鉢いっぱいに浮かべられた椿です。とてもきれいでかわいらしく飾られています。境内には他にも切り株や参道で椿を飾っていたりするので、探してみてくださいね。
- 方丈庭園にある善気水は洛中名泉の一つ
- 狩野光信の障壁画がある
その他にも木々に囲まれており、苔が綺麗なので、苔好きの人にもオススメのスポットです。
3. 法然院の境内と有名人のお墓
法然院は、茅葺で数奇屋造りの山門から見る竹林が印象的な小さなお寺ですが、多くの文人や学者によってその閑寂さが愛され、境内には河上肇、谷崎潤一郎、内藤湖南、 九鬼周三、福田平八郎、稲垣足穂などのお墓があります。
河上 肇
- 河上 肇(かわかみ はじめ)は日本の経済学者
- 京都帝国大学でマルクス経済学の研究を行う
- その後、教授を辞め日本共産党員となり検挙され獄中生活へ
- 『資本論』の一部を翻訳
- コミンテルン32年テーゼの翻訳
- 『貧乏物語』・『第二貧乏物語』『資本論入門』を著作がある
- 死後に『自叙伝』を刊行
- 福田徳三のライバル
谷崎潤一郎
- 谷崎潤一郎(たにざきじゅんいちろう)は日本の小説家
- 明治末期から第二次世界大戦後の昭和中期まで活躍
- 初期は耽美主義の一派
- 『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』などの純文学を執筆
- 「文豪」「大谷崎(おおたにざき)」と称された人物
- 純文学以外にも多くの作品を残している
内藤 湖南
- 内藤 湖南(ないとうこなん)は日本の東洋史学者
- 戦前を代表する東洋学者
- 戦前の邪馬台国論争や中国における唐宋変革時代区分論争などで学界を二分した
九鬼 周造
- 九鬼 周造(くき しゅうぞう)は日本の哲学者
- 京都大学教授
- 日本固有の精神構造あるいは美意識を分析
- 『「いき」の構造』を著した
- 『「いき」の構造』は日本文化を分析した本
普段は観光客も少な目で、緑豊かな境内をゆっくりと回ることができます。春と秋には堂宇の特別公開がありそのときには大勢の参拝者が訪れます。御朱印が頂けるのも特別公開の期間だけのようです。
4. 法然院へのアクセス
- 拝観時間:9:00〜16:00
- 拝観料: 境内拝観自由
- 特別公開時:拝観料は春は500円。秋は800円(境内を歩くだけなら無料)
バス電車などでのアクセス
- 阪急四条河原町駅より市バス32系統、銀閣寺前行南田町下車、徒歩5分
- JR京都駅・京阪三条駅より市バス5系統岩倉行、浄土寺下車、徒歩10分
- 京阪出町柳駅より市バス錦林車庫行、浄土寺下車、徒歩10分
法然院の最寄駅は出町柳駅や蹴上駅なのでかなり遠くなります。
銀閣寺から徒歩数分の場所にあるのが法然院と覚えておくとわかりやすいでしょう。
5. 法然院を含むおすすめ散策ルート
法然院を含むおすすめルートは次の通りです。
- 京都市営地下鉄蹴上駅
- 金地院
- 南禅寺
- 永観堂
- 哲学の道(若王子神社→法然院→銀閣寺)
- バスで京都駅
これだけ回っても距離にして約3キロで、一箇所1箇所じっくり回っていると時間が足りなくなると思います。
また、哲学の道周辺は観光名所が集まっている場所なので、東山の自然を感じながら、散策することができます。桜や紅葉の時期は特にきれいだと思えるでしょう。
哲学の道の北端にある銀閣寺の前にはお土産屋や飲食店が集まる商店街があります。法然院は銀閣寺に近いので、ランチやお土産の購入などはそちらが便利です。
また、逆に哲学の道の南端から蹴上駅まで歩く途中に南禅寺があります。南禅寺周辺にも多少ですがお土産屋や飲食店があるので活用できます。ただしこちらはお値段がやや高めなので注意。
どちらの駅からどちらに向かうかを考えて哲学の道周辺の観光を考えると、無駄なく色々なスポットに行くことができるしょう。