赤山禅院の歴史を猿と福禄寿、赤山大明神や泰山府君で解説
赤山禅院の歴史を円仁・神猿・安倍晴明や泰山府君、赤山大明神などをまとめ、その繋がりや成り立ちを解説します。赤山禅院の歴史を知ると、観光するさいにも平安時代からの流れを知っていると今までとは違った雰囲気を感じられるようになるでしょう。
赤山禅院とは
赤山禅院は天台宗の寺院で、延暦寺の塔頭の1つです。地元では「赤山さん」という相性で親しまれています。仁和4年(888年)に慈覚大師・円仁の遺命により、天台座主安慧が創建したとされています。
円仁と赤山大明神とは
赤山禅院の御本尊は陰陽道の泰山府君(赤山明神)です。赤山大明神を祀る赤山禅院は円仁の遺言によって建てられました。その経緯が次のものになります。
円仁(794年〜864年)は桓武天皇の時代に活躍した最澄の弟子で、遣唐使として唐に行いった人物です。入唐八家という最澄・空海・常暁・円行・円仁・恵運・円珍・宗叡の一人で慈覚大師(じかくだいし)の大師号をもらっています。
円仁の著書に入唐求法巡礼行記があり、遣唐使としての活動がわかります。円仁が赤山禅院を建てる流れは下記の通りです。
- 帰国時に無事に日本に帰れるように中国の赤山法華院で願う
- 帰国後に赤山大明神を祀る約束を立てた
- 円仁が帰国時の船が嵐に遭遇
- 嵐の中赤山大明神が現れ天空に矢を放ち嵐を沈めた
- 円仁は帰国後、遺言として赤山禅院の建立を命じた
赤山禅院の見どころ
拝殿の魔除けの猿と鬼門
神猿
境内に入ると目に付くのが拝殿の屋根の上の御幣と神楽鈴を持った猿の像です。この猿は比叡山を護っている日吉大社の神猿(まさる)と言われています。
神猿は神の遣いで、日吉大社の御祭神・大山咋神(おおやまくいのかみ)が猿の姿で天から降りてきたので、猿が神の遣いとなっているとのこと。そのため、比叡山を守る日吉大社の神の遣いの神猿が赤山禅院におり、京都御所にも居るということです。
- 干支の申年は神を示すという漢字でできている
- 何かあれば神猿が天に知らせて大山咋神が降りてくる
- 金網の中に入れられているのは、夜になると暴れだし、いたずらを繰り返したため
鬼門
なぜここにあるのかというと、京都御所から見ると比叡山が鬼門(表鬼門)になるため、京都御所にある猿ヶ辻の猿と向き合っており、都に邪気が入らぬよう護るために設置されたという歴史があるのです。
- 日吉大社は比叡山の麓にある神社で崇神天皇7年頃の創祀。全国約3800の日吉・日枝・山王神社の総本宮
- 神猿が持つ御幣(ごへい)とは、手に神を降ろす神道の神具
- 神猿が持つ神楽鈴(かぐらすず)とは、「神の宿るところ」などの意味がある神具
桃太郎と鬼門
日本には十二支がありますが、猿は方位の(申)でいうと鬼門の反対である西南西を指すことから邪気を払うとされています。実は日本の昔話の桃太郎の物語は、十二支で見ると鬼門の反対である位置に犬・猿・雉を仲間にして鬼門(鬼)を退治にいく物語になっています。
桃太郎の桃と鬼門と安倍晴明
また、桃というのは桃太郎以外にも古事記などの日本神話にも出てくる果物で、イザナギが黄泉から脱出する際にイザナギや黄泉醜女(ヨモツシコメ)から逃れるために投げた果物です。
さらに安倍晴明など陰陽道や古来中国でも魔除けとして扱われているのです。
このようなことから鬼門と猿の関係も、桃太郎の話を知っているとスッキリわかるのではないでしょうか。そして、安倍晴明とも関わりが深いのが赤山禅院なのです。
本殿は、七福神の福禄寿が赤山大明神
赤山禅院はお寺でもあり神社でもあるため、拝殿の裏に本殿があるという神社的な配置になっており、そこに赤山大明神が祀られています。
また先程、安倍晴明にも関わりが深いと伝えたのは赤山大明神が泰山府君だからです。赤山禅院の本尊である赤山大明神は、天では福禄寿神、地では泰山府君とされいます。
その事から、赤山禅院は七福神・福禄寿の寺として御朱印やお姿みくじなどにも福禄寿が使われています。
- 泰山府君とは、中国・山東省の聖地泰山を納める神
- 府君とは長官のこと(閻魔大王のようなもの)
- 山上に人間の寿命を記した禄命簿があると信じられていた
- 禄命簿とはその人の寿命と禄高(財産)を記したものを持っていたとされた
その禄命簿のように良いように生かしてもらうようお参りをするのが赤山禅院の本殿です。そして泰山府君が日本に入る流れは下記のとおりです。
- 泰山府君は道教の神として祀っていた
- 密教にも泰山府君が出ていた
- 泰山府君は吉備真備(きびのまきび)が阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)から伝えられたのが始まり
- 陰陽道の元になったのが吉備真備
- 安倍晴明が道教と密教の教えを習合させ陰陽道の神とした
- 一条天皇が病気になった際に安倍晴明が泰山府君を祀り有名になった
狛犬はお参りに来た人の心を善か悪かを見極める
福禄寿は頭の長い老人で、おみくじもユニークな作りになっています。福禄寿神は、幸福・高禄・長寿の三徳を与え、ご利益としては商売繁盛・延寿・健康・除災などと言われています。赤山禅院の御朱印は七福神の福禄寿に関連したものがいただけます。独特の筆使いが印象的な御朱印です。
十六羅漢と三十三観音
釈迦の弟子で特に優れた16人の羅漢を十六羅漢といいます。羅漢(らかん)とは阿羅漢(あらかん)の略称で、仏教で修行を完成させ、悟りを得た聖者のこと。
縁結びの神、相性社、相性宮という場所があります。縁結びの絵馬が人型になっており、男女色違いで吊るされています。縁を結びたい人は行ってみるといいかもしれませんね。
消防車
古そうな火消しに使うと思われる道具があります。消防車のようなもので、消防組と書かれていますね。他の寺院では見たこともないものなので、ちょっとした見どころと言えるでしょう。
行事
新春八千枚大護摩供
新春八千枚大護摩供は毎年1月5日に行われる京都の冬の風物詩です。
不動真言が唱えられる中、千日回峰行を満行した大阿闍梨が信者などの願いが書かれた護摩木を焚き上げ、所願成就を祈願する鎌倉時代から行われていたとされる大祭です。
午前9時から午後3時まで行われ、一年間の厄除けや家内安全などを祈願します。
泰山府君祭・端午大護摩供
泰山府君祭・端午大護摩供は毎年5月5日に行われる京都の春の風物詩です。
千日回峰行を満行した大阿闍梨がによる大護摩供により、災厄除去、病魔退散、無病息災などを祈願します。大般若経転読や御詠歌の奉納も行われます。
もともと、泰山府君祭では筆と硯と墨を用意していました。その意味は泰山は死んだ後のその人の情報(禄命簿)があるためで、意味は泰山府君に寿命が長くなるよう禄命簿を書き直してもらうということでした。
へちま加持
へちま加持は毎年中秋の名月の日に行われています。千日回峰行を満行した大阿闍梨が、へちまにぜんそくや気管支炎を封じ込め、加持・祈祷を行います。
中秋の名月の日に行われる理由は、その日から次第に月が欠けていくのと同じように病を減じさせるためと伝えられています。
数珠供養
数珠供養は、毎年11月23日に行われています。数珠供養では千日回峰行を満行した大阿闍梨の祈祷により、傷んだり、使わなくなった珠数をお焚き上げし、炎によって浄めて供養します。赤山禅院の数珠供養には全国から数珠が送られてくるそうです。
もみじ祭り
紅葉寺とも呼ばれていた赤山禅院では、11月になると境内が紅葉で鮮やかに染まり、境内はとても美しい景色に包まれます。
この時期は紅葉を見にくる参拝客が増えますが、赤山禅院は、修学院離宮よりもさらに山手に入ったところにあるので、それほど混雑することもなく、ゆっくりと紅葉を楽しむことができる名所として知られています。11月初旬から色づき始め、見頃は11月下旬とされています。
赤山禅院の境内は広く、境内の中に階段で上がる高低差や池などもあり、紅葉の時期には木々に囲まれた美しい紅葉の風景をみることができますが、山に近いからか、他とは紅葉の時差がある場合があります。
千日回峰行
千日回峰行とは、滋賀県と京都府にまたがる比叡山山内で行われる、天台宗の回峰行の1つです。数ある修行の中でも随一の荒行と言われ、満行者は「北嶺大行満大阿闍梨」と呼ばれます。
7年間にわたって行う修行で、1年目〜3年目までは、30キロの行程を100日間、4年目と5年目は、200日間、定められた260カ所以上のすべてで立ち止まり、礼拝して、峰々を巡ります。
赤山禅院では、千日回峰行を満行した大阿闍梨が住職をつとめ、八千枚大護摩供、へちま加持、珠数供養などの加持・祈祷が行われています。
赤山禅院の獅子
赤山禅院には獅子・狛犬が何体かありますが、一部見慣れない獅子があります。マレーシアに三寶洞(サンポトン)という寺院がありますが、ここの獅子と赤山禅院の獅子が同じ作りになっているので、外国の獅子や狛犬の影響を受けていると考えれらるでしょう(小さい右上の獅子画像が三寶洞の獅子)。ちなみにツノがあるのが狛犬で無いのが獅子です。
おすすめ観光ルート
一乗寺駅から金福寺 → 詩仙堂 → 八大神社 → 野仏庵 → 圓光寺 → 曼殊院 → 修学院離宮 → 赤山禅院 → 修学院駅
これがオススメのルートですが、野仏庵は空いている日と空いていない日があること、修学院離宮は予約(なくても入れる場合もある)や時間指定があることに注意。
また、それぞれが近くにあり、徒歩で移動できる距離という利点がありますが、これだけの数を観光するとなると、一つ一つを長時間見ることは難しく、あっという間に時間が過ぎていきますね。
金福寺・詩仙堂・野仏庵・西圓寺・曼殊院は規模の小さい庭園を楽しむタイプのスポットなので、ゆっくり風情を楽しめる場所が続いていて、そのような楽しみ方をしたい人にはおすすめのエリアといえるでしょう。
お店やお食事処は、詩仙堂周辺に多少あり、修学院離宮に近くなる程見つけにくくなります。駅前にはお店はあるので、お土産やお食事はそちらでも可能です。その点も考慮して観光プランを立てるとスムーズな観光ができると思います。
また、これらは比叡山の西側を散策するルートで、紅葉が美しく、紅葉シーズンは観光客が多くなるので、修学院離宮を含める場合は予約をしておくといいでしょう。
赤山禅院へのアクセス
赤山禅院へのアクセス
住所:左京区修学院開根坊町18
バス
京都駅から京都市営バス5号系統「修学院離宮道」下車
四条河原町から京都市営バス5, 31号系統「修学院離宮道」下車
電車
叡山電鉄の修学院駅が最寄駅になります。
叡電は出町柳駅から乗れるので、出町柳駅→修学院駅→徒歩というルートになります。
ただ、おすすめ観光ルートでご紹介したように修学院駅の前の一乗寺駅で下車し、詩仙堂などの各スポットを巡っていくことも距離的に可能なエリアと言えるでしょう。
下記に赤山禅院付近の観光スポットをまとめたので、参考にしてください。