東寺の見どころ(境内・庭園・季節を解説)と歴史をわかりやすく解説

東寺の五重の塔と梅 01. 京都のお寺

東寺の風景

東寺は教王護国寺とも呼ばれ、京都駅から近く見どころの多い寺院です。このページでは境内・庭園・季節の3つのカテゴリーをメインとし、その他歴史や人物もあわせて東寺の見どころを解説していきま

東寺の特徴

東寺は教王護国寺とも言い、立体曼荼羅と五重塔が有名です。そして東寺は空海ゆかりのお寺なのです。空海は唐で密教を学び奥義を継承。異国の言語を異常な速さで習得していったり、異国の僧なのに短期間で密教の後継者に選ばれるなど天才的なエピソードもあります。

空海は31歳で遣唐使として唐に留学します。当時最先端の仏教である密教を2年で継承し帰国します。

帰国後は嵯峨天皇から優遇され、平安京の正門である羅城門の東を守る官立寺院・東寺を任されます。

嵯峨天皇から官立寺院である東寺を任された空海は、東寺の境内全体を使い曼荼羅を表現することとしました。講堂に21体の仏像が配置された立体曼荼羅があるなど、密教が各所に感じられるのが東寺の特徴です。

東寺の南大門を入ると、平安時代から変わらない配置で、金堂、講堂、食堂と伽藍が並びます。これは仏教の三宝を表しています。三宝とは、仏法僧のことです。

東寺境内9つの見どころ

東寺境内の風景

東寺の見どころは無料の境内と庭園に分かれており、まずは無料で見られる見どころを紹介していきます。

見所1.東寺の3つの門

見所1. 南大門

南大門

東寺の入り口はいくつかありますが、入り口としては南大門がおすすめ。「なんだいもん」と読み、東寺の南側にある巨大な門です。創建時の門は消失してしまったため、三十三間堂の西門を移築して造られています。

南大門(なんだいもん)は、三十三間堂の西門を移築したもので、東寺の正門であり重要文化財。高さ約13m、幅約18mの切妻造本瓦葺、三間一戸八脚門の大きな門。南大門の中に金堂が見えます。

慶賀門

慶賀門(けいがもん)は、京都駅から一番近い東寺の入り口で、鎌倉時代からある重要文化財。

東大門

東大門(ひがしだいもん)は、不開門(あかずのもん)とも言われる門。1336年(建武3年)の南北朝時代に、足利尊氏が上洛した際、東寺に布陣。新田義貞からの攻撃で窮地に陥りますが、東大門を固く閉ざし難を逃れたことに由来しています。

見所2. 食堂(じきどう)

見所2. 食堂(じきどう)

東寺の食堂

食堂とは僧が食事をしていたお堂で、現在ではお参りをしたりおみくじを引いたりできる場所になっています。

中に四天王像があります。過去には足利尊氏が一時的に住んでいたとも言われています。

見所3. 大日堂・毘沙門堂・御影堂(みえいどう)

見所3. 大日堂・毘沙門堂・御影堂(みえいどう)

東寺の御影堂

東寺の御影堂は空海が住んでいた場所という意味で、大師堂という別名が付いています。空海の別名は弘法大師(こうぼうだいし)。そのため大師堂と呼ばれてます。国宝の弘法大師像が祀られ、毎朝「生身供」が行われます。

生身供(しょうじんく)とは、毎朝6時に行われ参加もできる法要。空海へ食事やお茶をお供えします。国宝・弘法大師像を拝みつつ、読経を行い、仏舎利を頭と両手に授けるというもの。

  • 御影堂には大師尊像がある
  • この像は1233年(鎌倉時代)仏師康勝の作品

御影堂の斜め前に毘沙門堂があり、御影堂を回って裏手に行くと大日堂があります。

見所4. 宝物館

見所4. 宝物館

東寺の宝物館

仏像や古文書などを見ることができる有料の建物です。約1万5千もの宝物が収められており見応えがあります。

庭園以外ではここのみ有料で、春・秋に特別公開されます。

見所5. 小子房

見所5. 小子房

東寺 小子房

小子房は足利尊氏が都入りした際に光厳上皇が一時的に御所とした場所で、いつも閉まっています。

見所6. 潅頂院

見所6. 潅頂院

東寺の潅頂院

潅頂院(かんじょういん)は、創建半ばで空海は入定し、東寺第二祖の実恵大徳により完成、三代将軍・徳川家光が再建しています。

毎年4月21日は空海入定日のため特別公開され、龍神が描くとも伝えられる絵馬の参拝で賑わうとか。

  1. 名前にある潅頂(灌頂)とは、密教では正当な継承者とする儀式のこと
  2. 空海が唐に行き、密教継承者の恵果(けいか)から灌頂されている
  3. 空海も最長に結縁灌頂を行なっている
  • 潅頂院(「かんじょういん」 空海入定日の4月21日に特別公開される)
  • 閼伽井(「あかい」 潅頂院にある灌頂儀式に使う井戸)
  • 結縁灌頂(けちえん かんじょう)→ 仏と縁を結び、本尊になってもらう仏を決める灌頂
  • 受明灌頂(じゅみょう かんじょう)→ 弟子として修行し、密教を深く学ぶ段階の灌頂
  • 伝法灌頂(でんぼう かんじょう)→ 阿闍梨になる灌頂。密教の奥義が伝授され、弟子を持てるようになる
見所7. 八島殿

見所7. 八島殿

東寺の八島殿

南大門を入って右側にある神社が八島殿です。東寺双剣前からある神社で、大己貴神(おおなむちのかみ)を祭神としています。

空海は東寺の伽藍建立について祈願をしたといわれています。

見所8. 修行大師像(空海)

見所8. 修行大師像(空海)

修行大師像

東寺の南大門を入って左に修行大師像(空海)があります。ここでは空海についてわかりやすく解説していきます。仏教は聖徳太子の時代から日本に伝わり、その後も続いていました。

数百年後、空海が遣唐使として唐に渡り、当時最新の仏教だった「密教」を体得し日本へ持ち帰ります。その後、影響力を持った空海は仏教だけではなく国や民衆に多大な貢献をしています。

そして最終的には「56億7000万年後、私は必ず弥勒菩薩とともに下生する。」と言い残して即身成仏となっています。

  • 現在の香川県にて空海が誕生(774年)
  • 大学に行き、辞め、乞食僧となり、空蔵菩薩求聞持法を唱え、開眼する

空海は、空蔵菩薩求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)の修行により覚醒します。その後、31歳で遣唐使として唐へ行き、密教継承者である恵果和尚(けいかおしょう)に師事します。

  • 唐滞在の二年間で恵果に密教を伝授され、空海は帰国(806年)
  • 帰国後、朝廷に「御請来目録(ごしょうらいもくろく)」などを提出
  • のちにこれらを見た最澄は自分の密教が不完全だと感じ空海に弟子入りする

当時仏教の最高峰だった比叡山の最澄。この最澄が驚くことに空海に弟子入りしますが、最終的には仲違いします。

  • 823年 京都の東寺を賜り、教王護国寺と改名した
  • 824年 京都の神泉苑で7日間祈祷し雨雲を呼んだ(50歳)
  • 828年 綜芸種智院を創立。入りたい人は誰でも入れて費用もタダの総合教育の場

東寺を賜り、ここから教王護国寺として現在まで東寺の歴史が続くことになります。神泉苑での雨乞いや、手芸種智院の創立の他、各地で土木事業に取り組むなど仏教の教えを体現し人々の苦しみを取り除くことを行動で行なっていた痕跡が見られます。

  • 835年(承和2年) 3月21日に高野山にて即身成仏した(62歳)

空海が即身成仏するにあたって「56億7000万年後、私は必ず弥勒菩薩とともに下生する。」ということを伝えているのが他の仏教僧とは違う部分と言えるでしょう。

東寺は空海がいなければ全く違ったものになっているので、空海の持ち帰った唐の文化や密教や仏像など歴史を感じられる貴重なお寺になっています。

見所9. 鎮守八幡宮

見所9. 鎮守八幡宮

南大門を入って左奥にあるのが鎮守八幡宮です。割と見落としやすいので見どころとして載せておきます。鎮守八幡宮から矢が飛び、足利尊氏が勝利した伝説があります。

東寺の東大門、別名・不開門(あかずのもん)と関連するのが東寺鎮守八幡宮です。

後醍醐天皇軍の新田義貞が足利尊氏を東寺で追い詰めた時、東寺鎮守八幡宮の明神が新田義貞らに矢を放ち足利尊氏を助けたという伝説があります。

鎮守八幡宮は東寺創建時からある神社で、空海が作った僧形八幡神と女神二尊が祀られています。

見所10. 宝蔵

慶賀門から入って左手にあるのが宝蔵です。平安時代の重要文化財で、空海が唐から持ち帰った仏具が修められていた建物です。

東寺 庭園3つの見どころ

東寺の桜

東寺には有料の庭園があります。この庭園の中の見どころは3つ。金堂・講堂・五重塔です。

庭園自体は季節によって雰囲気が変わり、不二桜や瓢箪池など見どころも増えるので、季節の写真を載せて後述します。ここでは庭園内の建物3つを解説していきます。

庭園内の見所1. 講堂

庭園内の見所1. 講堂

東寺 講堂

立体曼荼羅は講堂にあります。密教の思想を仏像を使って表現した東寺の特徴の一つです。すべての仏像が国宝か重要文化財になっており、価値の高い見どころの一つと言えます。

講堂は大日如来を始め、五智如来・五大菩薩・五大明王、そして帝釈天を筆頭とする天部などが21体配置されています。これが立体曼荼羅で、空海が日本にもたらした密教の世界を楽しめます。仏像の中にイケメンと話題の帝釈天像があるので探してみましょう。

五重塔は春と秋に内部が特別公開されます。塔内部は密教の教えを表現した立体曼荼羅の造り。

庭園内の見所2. 金堂

庭園内の見所2. 金堂

東寺の金堂

講堂の隣にあるのが金堂です。南大門や五重の塔に近い方が金堂で、当時の本堂であり、巨大な薬師如来像をはじめ、両脇に日光月光菩薩を見ることができます。

仏像の基礎知識としては、仏教には如来を頂点に、菩薩・明王・天部と言う階層があります。

  1. 如来は、悟りを開いた最上位の存在。大日如来、薬師如来など。
  2. 菩薩は、悟りを開くための修行中の存在で、人々を救います。日光月光菩薩、など。
  3. 明王は、悪を討つ存在のため怒りの形相をしています。不動明王など。
  4. 天部は、仏教界を敵から守る守護神です。帝釈天・四天王など。
庭園内の見所3. 五重塔

庭園内の見所3. 五重塔

東寺の五重塔

東寺の五重塔は木造の塔としては日本一高く、約55mあります。

  • 東寺の五重塔は4度も焼失している
  • 徳川家光が立て直し、現在の5代目の五重塔に至っている
  • 五重塔は一階のみ入れる特別公開があり、仏像や僧の絵がある

五重塔は826年(天長三年)弘法大師が創建着手し、その後4回焼失。現在の五重塔は1644年(正保元年)に徳川家光の寄進で建て直された江戸時代からのものです。

東寺 季節の見どころ

東寺の境内

東寺は春に桜、秋に紅葉が楽しめる庭園があるので、季節の見どころとしては桜と紅葉の時期になります。この2つの時期は夜間特別拝観も行っており、庭園に入って夜桜や夜の紅葉ライトアップを楽しむことができます。

季節の見所1. 東寺の梅

季節の見所1. 東寺の梅

東寺の梅

東寺の梅は、梅を見るために東寺に行くというほど見事なものではありません。数も少ないので、冬の庭に彩りを加える程度の風景になります。ただ、五重塔に梅が重なる風景があるので、他のお寺では見られない風景として楽しめます。

季節の見所2. 東寺の桜

季節の見所2. 東寺の桜

東寺庭園内に不二桜という大きな桜の木があります。その他にも庭園内に桜があり、ピンク色が映える見栄えのする庭園を楽しむことができます。


五重塔と瓢箪池(ひょうたんいけ)と共に映る桜の風景は思い出に残る風景になると思います。

東寺の不二桜

不二桜(ふじざくら)は、樹齢130年の八重紅しだれ桜で、高さは13mあります。名前は空海の不二の教えが由来となっています。

岩手、秋田、三重、そして京都の東寺に2006年に移植されたという経歴があります。

季節の見所3. 東寺の夜桜ライトアップ

季節の見所3. 東寺の夜桜ライトアップ

東寺は夜桜のライトアップ期間がおすすめです。特にカップルのデートにはおすすめのスポットになっており、夜桜を眺めながら和んでいるカップルなども見かけます。「来て良かったね。」「すごいね!」という言葉がよく聞かれるほどなので、デートにはおすすめのスポットと言えるでしょう。

季節の見所4. 東寺の紅葉

季節の見所4. 東寺の紅葉

東寺は京都駅から最も近い紅葉スポットの一つなので、人も多くきますが、境内が広いことや、有料の庭園も広めな造りになっていることもあり、スムーズに観光できる日が多いスポットです。五重塔や瓢箪池(ひょうたんいけ)と紅葉の組み合わせをゆったりと見て周り、仏像も拝観すると、思い出に残りやすい紅葉になるかもしれません。

季節の見所5. 東寺の紅葉ライトアップ

季節の見所5. 東寺の紅葉ライトアップ

東寺は秋になると紅葉のライトアップもあります。紅葉のライトアップも見事で、池に反射した五重塔や紅葉が美しく、幻想的な風景を楽しめます。夜桜のライトアップとは違う美しさがあるので、秋の紅葉スポットとして、昼夜で東寺を楽しむのも良いかもしれません。

季節の見所6. イチョウ

季節の見所6. イチョウ

東寺のイチョウ

南大門側のイチョウが立派で紅葉すると存在感があり見事です。

東寺 その他の見どころ

ここからは東寺の見どころを解説していきます。

弘法市と骨董市

東寺では定期的に2つの市が開かれています。弘法大師空海の死後、命日の3月21日にちなんで毎月、弘法市が開かれています。その他、骨董市も開かれているので、タイミングが合う人は一度参加してみると良いと思います。

  • 弘法市・・・毎月21日
  • 骨董市・・・毎月第一日曜日
万病ぬぐい 贔屓

万病ぬぐい 贔屓

東寺にいくと亀のような像が目に付きます。これは贔屓(ひいき)という想像上の動物で、中国が元になっています。贔屓は万病平癒のご利益があるといわれ、万病ぬぐいの布で贔屓をさすり、自分の患部もさすると傷病の回復や軽減に効果があると言い伝えられています。

  • 万病ぬぐいの布は東寺の御影堂にある
  • 傷病が回復したり、効果が薄くなったら布納めの棒に結ぶ
観智院

観智院

東寺の観智院

南大門の対面がの北大門を出てすぐ右にある塔頭が観智院(かんちいん)です。塔頭とは寺から派生した子院のこと。

客殿は桃山時代の書院造りの様式なので、造りに注目してみると良いと思います。真言宗の中の、大学の研究所のような位置付けで、本尊は五大虚空蔵菩薩です。また、宮本武蔵筆とされる鷲の図・竹林図があります。

  • 杲宝(ごうほう)が造営を始めた寺
  • 金剛蔵聖教(こんごうぞうしょうぎょう)を保管
  • 本尊は五大虚空蔵菩薩像は恵運(えうん)の請来仏
  • 東宝記(とうぼうき)は杲宝と賢宝(けんぼう)が編集した東寺の寺誌
  • 荒廃していたが1605年(慶長10年)に再建

東寺 見どころのまとめ

東寺 紅葉 ライトアップ

東寺の魅力は京都駅から近いのですぐに立ち寄れる事。そして仏像が豊富にあり、立体曼荼羅など空海が唐から持ち帰った歴史や密教を感じられることが魅力です。その他、桜や紅葉などの季節感を味わえる庭園があることも他のお寺と違い楽しめるポイントになっています。骨董市なども人によっては面白いので、日程が合う人は日程を確認して東寺に行ってみると良いでしょう。

東寺に関わる人物

東寺に関わる人物

空海

空海は別名を弘法大師ともいい、真言宗の祖。

唐で密教を受け継ぎ日本に密教を輸入。唐から曼荼羅や法具、経典などを持ち帰り、天皇からの絶大な信頼を得て東寺を建立。

書道や土木など多くのことに精通し、「弘法も筆の誤り」という諺の由来ともなっています。

足利尊氏

不開門といわれる東大門を固く閉ざすことで劣勢を乗り切った足利尊氏。

そして東寺鎮守八幡宮から矢が放たれ新田義貞軍を退けた足利尊氏。

このように東寺は足利尊氏に味方したという歴史がわかる逸話が残っています。

当時、足利尊氏や新田義貞は京都でも各所に歴史的な痕跡があります。

足利尊氏は後醍醐天皇の菩提を弔うため天龍寺を建立し、同じ嵐山の滝口寺には新田義貞の首塚があるなど、当時での攻防から京都観光時に歴史を辿ることもできます。

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